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<シナリオ>この空の青さは  「ストーリー」

五月の半ばになってやっと春らしくなった信州の自然公園。
野鳥の囀りに混じって「カシー、カシー」というカメラの軽快なシャッター音が静かな森に響きわたる。

そこには、腹這いにまでなって、まるで対話をするように顔を寄せて小さな花の写真を撮る青年の姿が。
可憐なカタクリの花を見つめているうちに、ある熱い思いが心の中にこみ上げてきた。
「明日、彼女に会いに行こう。そして今度こそ・・」
大学のキャンパスに戻っても、その強い思いは衰えず、足取りは、そのまま一直線に彼女のもとへ。

留年仲間の気のいい友の励ましもあって、足元に絡みつく一抹の不安など物ともせずその勢いはたいしたものだ。
一抹の不安-それは、自分が二流大学の落ちこぼれだという劣等感か。いや、それよりも、先輩が唱える極めて悲観的な恋愛論だ。
なんとなく好きというのがベストで、本気で好きだということを確認し合って始まる恋愛などまず有り得ない、という「日本的恋愛論」。

いったい何ていう話だ。そんなことが有ってたまるものか。じつは青年は、今日こそ彼女が本物の相手だということを確かめるために彼女に会いに行くのだから。そして、全てが始まるのだ。それが「自然」というものだ、と。

去年の冬休みのアルバイトで出会ったっ彼女。二人のインスピレーションは確かなものだった。
しかし、どうして・・。青年が手をさしのべたとき、その恋は終わりを告げたのだった。
先輩の言う恋愛論が正しいとでもいうのだろうか。いや違う。野暮な邪魔が入ったし、アプローチにも問題が。例外もあるさ。その証拠に・・・
水曜日の午後四時ちょうど。毎週毎週、同じ曜日の同じ時間。女子大の通学路。広場のベンチ。彼女がそこを通って、青年がそれを見ている。そして、彼女も・・。それは、もう何週間も続いている幸福な時間。だけど、このままでいい筈はない。だから、今日。

「真っ白な陶磁器をながめては飽きもせず。かといって触れもせず」・・まるであの歌のように、しかし今日も一日が過ぎるのだった。
そこには、誰もが直面せざるを得ない「日本的恋愛の壁」があるのだと、先輩は言う、
いったいどういうことなんだ・・。先輩が放課後の黒板に大きく書いた「曖昧」という言葉。これが壁の正体だという。・・じゃあ、どうして・・。
「日本的自我」-そしてもう一つ投げかけられた新しい言葉。そして、本物の恋愛、本物の自我とは・・。
友人と議論するうちに、日毎に信憑性を増していく先輩の話。まるで大きな壁の中を走り回るように、青年の彷徨は続く。

彼の憧れはもう一人、新進気鋭の自然写真家、木原和人。一匹狼と異名をとる彼の存在が、何故か青年にとって眩しいほどに輝いたものだった。
ある日、信州の高原で、偶然にも彼に出会った青年。ひと時の眩しい会話。「俺は曖昧なものが嫌いなんだ。いい加減が好かれる時代には、嫌われてナンボさ」・・憧れは本物だった。
何故か、彼女への思いが花園の中で燃え上がる。
新たな決心を抱いて、彼女の元へ・・。「本物は所詮少ないものさ。日本的も糞もあるものか」二人が本物だということを信じて、今度こそ決着の日を決める青年。

自我と自我の触れ合い、それが恋愛というもので、その時にこそ自我の本質が試されるのだと言う先輩。本物になれる確立は千分の一だとも・・・。
それにしても、この空の青さはどうだ。
あたかも運命を見守るかのように、二羽の鳶がその日も悠然と青空高く飛行していた。
そして・・・。
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この空の青さは①

〇信州・戸隠森林公園(五月下旬)
   画面一杯に広がるピントのボケた空の青と木々の緑(野鳥の囀り)。
   徐々にピントが合うと、新緑の高原の林の風景。            
   その下で、地面に這い蹲って小さな花の写真を撮っている青年の姿。
   シャッタ-音が響いている。
   少しアップで青年が花と対話するように撮影する姿。
   群生するカタクリの花。風に揺れる。
                            (O・L)
〇同森林公園内みずばしょう園 
   群生するミズバショウのなかの遊歩道を歩いてくるカメラマン姿の青年。
   立ち止まり三脚を立て撮影にかかる。
   すると、反対方向から歩いてきた二人組の若い女性ハイカ-の一人が、
   モジモジし合った後に、ポケットカメラを差し出して、爽やかな笑みを
   満面に湛えて青年に声をかける。
若い女性「すみませ-ん。写真お願いできないでしょうか。」 
    無垢な笑顔につられて思わず微笑み
青年「いいですよ。」
    明るくポ-ズをとる二人と青年の若くほほえましい光景。(好意的な彼女)
   「ど-も-。」と言って愛想よくカメラを受け取る彼女、手が偶然彼の手に
   触れ、ハッとして落としそうになる。
   二人の視線が合い熱い空気が流れる。
   自我に届く様な青年の純粋な眼差し。
   赤らんだ顔を見られて恥ずかしくなり
若い女性「有り難うございました。」
   と言ってペコリと頭を下げて去ろうとする。
   最初と違い引き攣ったような笑顔。
   まるで何かから逃げるように、そそくさと立ち去る。
   見る々遠ざかっていく二人の後ろ姿。
   ポツンと取り残されたような青年。
   「カッコ-」と野鳥の声が妙に響く。
   見上げると、春の森の青い空。
                            (O・L)
〇同森林公園内広場
   木造のベンチで、手を枕に仰向けに寝転がる青年。横にはカメラがある。
   少しアップで物思いに耽る表情。しかし間も無く大きな欠伸をする。
   カメラの方を見て
青年「イイのが撮れた。バッチシ。」  
   と言って上を見て、目を閉じる。
アップの青年の表情。少し経ってから目を閉じたまま満面の笑み。
   愛用のカメラが大写しになり、間もなく画面が黒いフィルム面になってシャ
   ッタ-音と共に彼の撮った写真が横に流れながら次々と写し出される。
   すると、その中に数カットだけ花に混ざって或る女性の写真が挿入される。
   ポ-トレ-ト風のそれは極端に紗がかかっていて、誰だか判らない程。
   しかし眩しく美しく輝いている。
    最後は全部その写真になる。
   アップの青年の表情。微笑んだ表情のまま目を開けると苦笑いになる。
青年「帰ろっと。」
    と言って身を起こし立ち上がる。
   手を上にあげて思い切り背伸びすると、その上は春の森の青い空。
   (タイトルがうかびあがる)
  ※(主題歌「この空の青さは」流れる)
                           (O・L)
〇戸隠バ-ドライン~中央本線
    バスが輝く新緑の中を行く。
   ゆっくりと流れる車窓からの信州の自然の風景。
   新緑の唐松林の緑と木漏れ日がキラキラと流れて光る。
    窓際でその光景をぼんやりと見つめる青年。
   バスがいつしか列車に変わる。
   
   ・帰ると決めた夜が明ける   ・初めてのように夜が明ける   
   ・ひとりよがりの冬が終わる  ・ひとりよがりの旅が終わる
   ・ああ それにしても      ・ああ それにしても
   ・この空の青さはどうだ     ・この朝の光はどうだ
  ・この雲の白さはどうだ    ・この木々の緑はどうだ
    ・僕はもう逃げない      ・僕はもう逃げない
    ・君が待ってる         ・君が待ってる   
   

   
   信州から遠ざかる列車、小さくなる。
   その上にパンして広がる春の青い空。                     
                                 (F.O) 
   (F.I) 
〇大学正門前
   青空から下にパンして或る大学の下校風景。
    山も近い緑の郊外。
   男子学生ばかりがぞろぞろ出てくる。
   [中央工業大学]のプレ-ト
   青年が友人と並んで出てくる。
    二人立ち止まって
友人「そうか、またあそこへ行くんだな。」
青年「(屈託のない微笑で)ああ。」
友人「今日は水曜日だからな。それにしても、そろそろ進展あるんだろうな。」
青年「まあ自然の成り行きさ。自然さまさま 神様さまさまだ。」と言って微笑む。
友人「(つられたように微笑んで)それにしても面白い関係だな。お前とあの子は。」
   おどけたように大げさな身振りで、頭を縦に振って頷いてみせる青年。
友人「御免、御免、面白いってつまり、興味 深いっていう事で。…言うなら、或る種の
 メルヘンって言うか、…何っ ていうか、今どき無いっていうか、やっぱり面白い。」
青年「(屈託なく笑って)いいんだいいんだチョット無い状況だからな。特別さ。」
友人「俺は応援してるんだぞ。冗談ぬきで。本物の恋愛ってのがどんな物か、見せ付
 けられてる様な気がしてるんだ。」
   真顔の友人を見て、同じく真顔になる青年、しかし突然プ-ッと噴き出す。
青年「悪い悪い。お前がそんなこと言うとは なあ。こりゃひとつ頑張んなくっちゃ。
それに、メルヘンていうのは当ってるかもしれない。も-しかして、ひょっとして。」
友人「(ホッとしたように)そうだそうだ、当ってる当ってる。その通りその通り。」   
   和やかに笑い合う二人。
   しかしまた真顔になって
友人「だから頑張ってほしいんだお前には。それに先輩の仮説を覆したいからな。」
青年「ああ、あれね。あの恋愛論。チョット悲観的すぎるけど、正解かもね。」
   と言って明るく笑う。
   つられてまた笑い合う。
友人「頼りにしてるぜ。俺なんかもう悲惨だからな。せいぜい良いもの見せてくれ。」
   笑って明るく頷く青年と、それにつられてまた笑い出す友人。
   その上に広がる初夏の青い空。
   のどかに飛行する鳶の姿。
                                  (O・L)
〇都会の繁華街
 ※(挿入歌「この汽車は」が始まる)
   青空の下のビルの谷間を青年が行く。
   人や車の雑踏を泳ぐ軽やかな足取り。
   決意と希望に満ちた雰囲気。
   足取りと共に点描される都会の明るい
   エネルギ-を示す様々な描写。
   街路樹の緑。店先や植木の花々。
   
   ・この汽車は機関手がいない   ・大きな汽笛は会えば別れだ
   ・終着駅まで止まらない     ・次の日はもう思い出だ
   ・終着駅は無いかも知れない   ・思い出がすぐ明日の期待に
   ・それは明日かも知れない     ・つながる程に優しくない
   ・明日になると向こう側から   ・優しくないけど走り続ける
   ・べつの汽車が来るだろう     ・右のレ-ルは僕の身体か
   ・べつの汽車は夜すれちがう    ・左のレ-ルは僕の心か
   ・汽笛の音を交わすだろう     ・どこまでも平行線
   ・ガタガタ必死に走るこの汽車は   ・ガタガタ必死に走るこの汽車は
   ・この俺の汽車は         ・この俺の汽は
   ・壊れそうで壊れない      ・壊れそうで壊れない
   ・必死に走り続ける        ・必死に走り続ける
   
  

   時計を気にしながら、街の大きな書店に入って行く青年。

〇書店(カメラ雑誌コ-ナ-)
   写真誌のペ-ジを捲っている青年。
   ペ-ジがアップになると、それは或る若手自然写真家の特集記事。 
   「一匹狼・木原和人・ネイチャーフォトグラファー」とある。
   それを手に取りレジで購入する。

〇街角
   人波をどんどん追い越して進む青年。
   まるで何かに引きつけられるように、
   公園をぬけ道路を渡り街なかを行く。
   すると、時々、それとは逆の向きで、
   女性のゆっくりと歩く足元が映る。 
   そしていつの間にか同じ向きになる。

   ・平行線はひょっとすると  ・終着駅は無いかもしれない  
  ・右のレ-ルがこの僕で   ・それは明日かもしれない
   ・左のレ-ルが愛する君で  ・ガタガタ必死に走るこの汽車は
   ・それでも僕は満足で     ・この俺の汽車は
   ・この汽車は機関手がいない  ・壊れそうで壊れない
    ・終着駅まで止まらない   ・必死に走り続ける
 
  

   地下鉄の入り口を下りて行き姿消える。

〇地下鉄構内
   電車がホ-ムに滑り込んで来る。
   止まってドアが開くと青年が最初に降りて来て人混みの中へと消える。
   エスカレ-タ-を歩いて上って行く。
   改札口の出口の人波の中で焦れったそうに順番を待つ青年、自動改札機を出
  ると早足でまた人混みへと消える。

〇街角の広場
   デパ-ト風の建物の前の広場のベンチ。   
    青年が現れて空席にドスンと座る。
   どうやらココが目的地らしい。
   フ-ッと大きく息をつき腕時計を見る。時計は3時46分。
   ベンチ越しの遠景を捉えると、女子大生が大勢つぎつぎと歩道を流れて行く。
 足を組みリラックスした雰囲気で、斜め横か向いて遠目にそれを見る青年。
 すると、突然その中の一人が晴れやかに微笑みながら近づいてくる。
女子大生「(大きく手を上げて)ゴメンナサ -イ。遅くなっちゃって。待ったかしら」
  青年の前で立ち止まった化粧っぽい美しさのどこか大人びた彼女。さらに、
   「ゴメ-ン。」と言って可愛く謝る。
青年「………」 
   何故か無表情で彼女を見つめる青年。
   すると、一人の男子学生が彼の背後からおもむろに現れる。      
   彼の目の前で対面する二人。
学生「待ったもいいとこだよ。十分早く来ちゃったから余計じゃん。」 
   オ-バ-アクションの不機嫌な表情。
   しかし、一転しておどけた雰囲気で
 「ウソッ。本当は今来たとこ。俺の方が遅 刻だと思った。…な-んちゃって。」   
   一転笑顔になる彼女それに返す様に
女子大生「ナ-ンチャッテは余分よっ。」
   と言ってツンとすました後笑い出す。
   和やかに微笑み合う二人。
背の高い彼は近づくと、彼女の頭を撫でながら耳元に何か囁いた後、手慣れ
   た様子彼女の頬にキスをする。
青年「………」
   和やかな雰囲気につられて微笑みぎみだった青年の表情、急に無くなる。
   肩を抱き寄せてまるで連れ去るように彼女をエスコ-トして立ち去る学生。
青年「………」
   二人の姿を目で追おうともせず、まるで無表情のままの青年。
   両手で顔面を擦り顔を洗う仕草。  
   閉じた目を見開いて、何かを思い出したように先程の方向に視線を向ける。
   女子大生の下校の列、先程より少ないが相変わらず流れている。
                                  (O・L) 
   その流れが少しアップになってしばらくすると(今まで聞こえていた周りの
   雑踏の騒音が消え)突然スロ-モ-ションになる。
   (心臓の鼓動の音が聞こえてくる。「ドク、ドク、ドク、ドク、……」)
                                  (O・L)
   流れが更にアップになり、紗がかかりスロ-モ-ションも一段と遅くなる。
   (心臓音が大きくなる)
   すると、集団から少し離れて、一人の清楚な女子大生が現れる。
   (心臓音が消えて沈黙となる)
青年の声「(小さく)来た-。」
   彼女は最初にフィルムで現れた女性。
   髪が風に揺れ明るい服が輝いている。
   中程まで歩みが進んだところで、おもむろに彼女がこちらを向く。
   青年を見つけた様子が伺えるが、驚く様子も無く、かといって微笑むでもななく、
   すぐ前を向きそのまま歩いて行く。しかし、その横顔は少しうつむきぎみで、はに
   かみながらも、或る種の幸福感を噛み締めている様子。
   そしてそのまま流れ枠から消える。 
青年「………。」
   時間が止まった様にポ-ッとした表情。
   女子大生の流れ、突然スピ-ドが平常にもどり、他の娘たちが後から後からら賑
   やかに流れて行く。(消えていた全ての音が騒がしい程に戻ってくる)     
青年「………。」
   意を決した様に立ち上がる。
   腰を上げる時の動作がアップのスロ-モ-ションで3回(O・Lで)入る。
   何かに押された様に、急いで流れの後を追いかけて行き、消える。

〇地下鉄入り口
   人混みのなか階段を下りて行く青年。
   遠くに彼女の後ろ姿を捉えている。

〇地下鉄構内
   行き交う人々にぶつかりながら階段を
   下りて来る青年。なんとか彼女を捉え
   ている様子。
   落ち着いてゆっくりと歩いている彼女。   
   しかし人波に消えてしまう。
   見失った様子で立ち止まる青年、背伸びをして前方を見回す。
   人混みのなかに彼女はいない。
青年の声「しまった-。」
   緊張していた表情が次第にほころび、ほっとした様子で一つため息をつく。
              (                   O・L)
〇地下鉄プラットホ-ム    
 ベンチに膝を組み頬づえをついて、何かを優しい目で見つめている青年。
   それは、少女が可愛い仕草でホ-ムのウォ-タ-ク-ラ-の水を飲む風景。
  少女の仕草が(O・Lで)アップになり、スロ-モ-ションになる。
  ※(挿入歌「白い一日」が始まる。)
(O・L)
〇街角の広場(回想)
   先程の女子大生の下校風景。
   スロ-モ-ションで歩いて来る彼女の数種類のバリエ-ション(O・Lで)
   それを見送る様々な青年(O・Lで)
   すましている彼女。
   こちらを向き驚く彼女。
   恥ずかしそうな彼女。
   緊張する彼女。
   微笑む彼女。
   時には友達と三人で。
   時には雨の日、傘をさして。
   ベンチで本を開く青年。
   ベンチで頬づえをつく青年。
   壁ぎわに寄り掛かる青年。
   時にはからかう友人と物陰から。
   最後は先程の彼女。
   立ちつくす青年の後ろ姿。

   ・真っ白な陶磁器を     ・遮断機が上がり振り向いた君は
   ・眺めては飽きもせず     ・もう大人の顔をしてるだろう
   ・かといって触れもせず   ・この腕をさしのべて
   ・そんなふうに君のまわりで  ・その肩を抱きしめて
   ・僕の一日が過ぎて行く     ・ありふれた幸せに
   ・目の前の紙くずは      ・落ち込めればいいのだけれど
   ・古くさい手紙だし      ・きょうも一日が過ぎて行く
   ・自分でもおかしいし      ・真っ白な陶磁器を
    ・破り捨てて寝転がれば    ・眺めては飽きもせず
   ・僕の一日が過ぎて行く     ・かといって触れもせず
   ・ある日踏切の向こうに君がいて  ・そんなふうに君のまわりで
   ・通り過ぎる汽車を待つ      ・僕の一日が過ぎて行く
  
                                                    
                                    (WIPE)
○大学の広場
 雲混じりの初夏の青空。鳶が二羽、大きく輪を描くように飛行している。
                                    (O・L)
 校内の広場のベンチに、手を組んで、仰向けになって空を見ている青年。(真上からの全身像。) 
                                    (O・L)
 青空に鳶がまた輪を描く。

※(挿入歌「落書5」が聞こえてくる)
   青空と青年(O・Lのまま)重なり、青年の映像ゆっくり回りだす。
   物思いに耽る青年の表情も。       

   ・あの塀を飛び越えれば   ・隙間風が吹いてる今の自分が
   ・しばらくはふくよかな風と   ・本当のような気もするし
   ・戯れながら少女の手をとって   ・分別と決断力は
   ・野原を駆けて           ・鏡のあちら側とこちら側に
   ・いられるかもしれないけれど     同時に映るもんじゃない
   

   歌が終わると回転が止まり、友人が現われ隣に座る。        
友人「(空を見て)いい天気だなあ-。」
青年「(仰向けのまま)………。」
友人「トンビが飛んでら。トンビガクルリト ワヲカイタ-ハ-イ-ノハイ-だ。」
 「あれはひょっとすると雄と雌だなあ。な んだかなあ-。うらやましいなあ-。」
青年「(仰向けのまま)………。」
友人「(顔を見て)テメエ差し詰めまたあの 子のこと考えてんだな。」
青年「(仰向けのまま)………。」
友人「(同じように空を見上げてゆったりと した感じで)だいじょうぶ。彼女は何も変わ
っ ちゃいない。少お前と出会った時、その時からね。だいたい誰も近付けないよ。近付くのはヨッポド無神経なバカ男さ。とりあえずそういう心配は無い」
 仰向けのままの青年のアップ。
青年「・・・ちょっと整理してるんだ。」
友人の声「それは必要かもね。」     
青年「あれから半年か。・・・確かに彼女は変わってない。それだけは分かってる」 
友人の声「いや、奇麗になってる」   
 急ににやけ顔になる青年。起き上がり
青年「そうっ。そうなんだよな。そうそう」   
 輪を掛けて機嫌をとるように    
友人「まったくもって罪な奴だぜ。ほんとに もう。お前って奴はっ。」
 と言って大袈裟にこづく。 
 つんのめってしまい椅子からはみだす青年、体勢を立直しながら
青年「ははっ。だけど、ほんとかなっと。」
友人「じゃあ、誰のせいなんだ。」
青年「それなんだよ。…だけど、いいんだ。 どうだって。つまり、無条件降伏なんだ」
友人「なにそれ。」           
青年「だから、無条件降伏。どんなな条件がついてたとしてもってこと」
友人「条件って…。」
青年「つまり…彼女が…どんな…つまり…」
友人「なんだ…つまり…あれだな…彼女が… やっぱ…つまり。処女じゃなくてもだっ」
青年「……バカッ。何を言うっ。…でもそう だよ。はははっ…。それはとっくに考えた さ。そりゃあ…その方が有難いけど。それ   が理想ってものだけど。……こういう時代 だからさ。…つまり、それも含めて全部」
友人「すごいなあ。俺達にはその理想を条件 にする資格が有る筈なんだけどなあ……」
青年「まあね。確かに…。だけどいいんだ。 俺は…あの時の…あのインスピレ-ションを信じたいんだ…。お互いが求め合う… 何かさ。もしかしたら…本物の…本物の…」  

この空の青さは②

〇回想(デパ-トの流通センタ-作業場) 
   梱包されたお歳暮の商品がベルトコンベア-の上を次々流れて行く。
友人の声「去年の冬休みのバイトがそもそもの始まりだ-。」           
   学生達に混じって二人が並んでお歳暮の仕分け作業に精を出している。  
友人の声「俺が見付けたアルバイトだぜ、言うならば俺は愛のキュ-ピットだ。」
青年の声「ぷっ。汚いキュ-ピットだなあ」
友人の声「そんなこと言っていいのか。生涯の恩人になるかもしれん御人に対して。」
青年の声「ど-ゆ-ことだ。」 
友人の声「そ-ゆ-ことだ。」
   二人の肩越しの前方に、従業員に連れられて大勢の女子学生がやって来る。
   そのなかに彼女がいる。
   従業員に配属の指示を受ける彼女達。
   それに気づいた男子学生達、そちらを向き一様に晴れやかな表情。
   二人も例外ではない。
   急に活気づく職場。特に包装作業のテ-ブルでは、ふざけたり大声を出したりと、
   色めき立ったような雰囲気。
                                  (O・L)
    数人の女の子のアップ。彼女だけが、なぜか、じっとこちらを向いている。
   一度前を見るが、またこちらを向く。
              ( O・L)
   作業をしながらも正面をじっと見つめている青年と、その視線に特別な気配を感
   じ取った様子の友人。
青年の声「あんなに凄いインスピレ-ション は生まれて初めてだった。」
   数人の女子と共に包装のコ-ナ-に連れられて行く彼女。歩きながらまたも
   一度チラリとこちらを見る。
友人の声「俺じゃないんだよな悔しいけど。そういえばお前けっこう二枚目だもんな。」
青年の声「そういう問題じゃない。」
   包装コ-ナ-の一つのテ-ブルに配属された彼女(青年から見て斜め前方の
  位置)周りの学生達の挨拶攻めなどに明るく対応している。しかし、またもや
  一度チラリとこちらの方を見る。
                                 ( O・L)
  横の学生から話かけられたりしながら楽しげに仕事をしている彼女。青年のいる
  方向を 向き姿を探す仕草。
                                  (O・L)
  少し違う位置で仕分け作業をしている青年。
  おもむろに彼女の方を見る。
                                   (O・L)
  はっとした様に正面を向き直し、はにかむ表情でうつむいて仕事を続ける彼女だが、
   またチラリと視線を向ける。
友人の声「お前は何か特別な色目でも使って たんか、一生懸命。」
青年の声「何てえ事言うんだよ。そんなこと ではない。お前にはわかんないって。
 俺だって初めての事なんだから。」
友人の声「彼女が色目つかったんだ。」
青年の声「ばか、そんなんじゃない。だけど どっちかと言えば同時なんだなこれが・・。
 何かがシックリと来ちゃったんだ。そうとしか言い様がない。…きっと、ずっと待ってい
 た何かなんだ。」
                                    (O・L)
   すっかり一つの集団に取り込まれてしまった彼女、休憩時間にコ-ナ-で、友達等と
    一緒に 質問ぜめに合ったりしていて案外楽しそうな様子。
  違う集団の青年と友人、遠目にそれを見やったりして気になる様子。
  するとまたこちらの方を見る彼女。
青年の声「俺よりもイケメンで格好のいい男なら、他にいっぱいいるんだぞ。」
友人の声「俺とかね。」
青年の声「それに、学校とか何も知らないままで。それが素晴らしいじゃないか。俺の中に
 求める物を見たのさ。他には無い何かだ。お互いの本質が自然に引き合ったんだ。…もう
 何もしないで良いような気がしちゃって…。だから、本当に、何もしなかった。…」                                                   (WIPE)
〇大学の広場(ベンチの二人)
   更に話しこんでいる様子。   
   感慨深げに
友人「そうだったなあ……。」
青年「グル-プが違うとどうしてもな。昼休みなんかも時間がずれてるし。なんか、何ん
 でも集団単位になっちゃうんだもんなあ。ミョ-にまとまっちゃって、ミョ-に何か枠み
 たいな物ができちゃった様で・・」
友人「(けろりとした感じで)集団主義というやつだ。このまえ先輩 が言ってた。集団主
 義からの脱却なくして は日本人の真の自立は無いって。」
青年「難しいことおぼえてんだなあ。それ、試験に出るの?。」
友人「試験に出ることだけ覚えてればいいという今の大学教育にこそ問題があるって。」   
青年「(苦笑して)わかったわかった。先輩の話は確かに面白いし、俺だって興味ある。
 だけど今日のところは止めにしよう。」
友人「とにかく距離があったことは確かだ。 だけど接近するチャンスも有ったよな。」
青年「有ったさ。接近どころか接触だよ。完 全なる第二種接近遭遇だよ。」
                                (WIPE) 
〇回想(流通センタ-作業場)
   休憩時間に二人がコ-ナ-の椅子に座って缶コ-ヒ-を片手に寛いでいる。
   遠目に、彼女が友達と一緒にホウキでしきりに床掃除をしている。
   すると、彼女達がホウキで床を掃きながら徐々に二人に近づいて来る。
   びびった様子の友人と落ち着いた青年。
   とうとう至近距離まで来た彼女、思い切り青年に視線を合わす。(それは正
   に恋心が裸になったような表情で)    
   その視線を受けとめている青年。
友人の声「彼女の方からだったな。」
青年の声「まさに、心と心が、触れ合った」
   ただならぬ雰囲気にびびりまくる友人
   思わず缶コ-ヒ-を床に落とす。
   青年の足元に転がる缶と、みるみるう
   ちに広がり出るコ-ヒ-。
   それを見た彼女、ココぞとばかりに駆け寄って、持っていた雑巾で床を拭く。
青年「どうも。すみません。」
   足を上げたりしている青年、いたたまれずに立ち上がろうとすると、
   拭き終えた彼女も同時に立ち上がる。
   触れそうな距離で見合って固まる二人。
青年「………。」
彼女「………。」
   はっとした様に半歩退く彼女。
   すると、彼女の左肩に大きな糸屑がついていて、それを青年が右手で取る。
   一瞬驚いたように肩を震わせて、もう半歩、反射的に退く彼女。
   しかし糸屑を見てすぐに微笑み、ペコリと小さく小首を下げてお礼をする。
   はにかむ彼女を助けるように
青年「ありがとう。それにしても君、素早かったねえ。さすがっ。」
彼女「ふふっ。」
   と言って肩をすぼめて微笑み 
彼女「偶然そこに居て雑巾持ってたの。」
   と言ったまま去ろうとしない彼女。
   一瞬、独特な熱い空気が漂う。
青年「どうぞ。」
   と、向かいの椅子を指して
青年「掃除、もういいんでしょ。どうぞっ。」
彼女「え、ええ……。」
   友達を小さな手招きで誘う仕草をしながらも、潔く座ろうとする。
   呆然としていた友人、突然の展開に慌てふためき、椅子を整えようとするが、
   自分が椅子から転げ落ちてしまう。
友人「アイタタタ-ッ!」
   と尻餅を突いたまま         
  「コ、コ-ヒ-こぼしたのも僕なんです。 僕って、ドジでノロマな、泥亀っ」
   おどけた素振りで照れ隠しする姿に、笑いが起こり、和やかなム-ドが広がる。
友人「お嬢様、どうぞこちらの席へ。お付のかたも、さあこちらの方へ。」
   と、ふざけた口調で取り仕切る。
   笑ったままの明るい表情で、友達と一緒に和やかに腰を下ろす彼女。
                                (WIPE) 
〇大学の広場(ベンチの二人)
   頭に腕を組み空を仰いで回想に浸っている二人。
友人「あの時は驚いたなあ。ほんともうビビ ッちゃった俺。あの状況ったらもう。」
青年「なんでお前がビビるんかなしかし。」
友人「いいじゃんか。そのお陰であんないい事になったんだから。」
青年「生涯の恩人ってか。」
友人「そ-。そのと-り。ご名答。」
青年「本当にそうなったら、嬉しいヨッ。」と言って天を仰ぐ。
友人「なるってなるって。あん時のお前とあの子ときたら。あ-もうっ・・・て感じ。」
   天を仰いでいた青年、急に向き返って
青年「そう、そうだろ、そうなんだよなっ。いやいや参った参った、へへ、へへへへ」
   と、満足そうな笑顔になる。
友人「それにしても、へんな邪魔が入ったものさ。せっかくの良いところになあ。」
   ゆっくり頷く青年。
                                  (WIPE)
〇回想(流通センタ-)
   先ほどのつづき。
   おどけ役になった友人を中心に、会話の弾むコ-ナ-の雰囲気が、
   様々な表情などの静止画で描かれる。
友人の声「俺の失敗話ばっかりでさあ。盛り上がったのはいいんだけど。とんだドジな
 ピエロを演じちまった。」
青年の声「実際の姿でしょ。お前の投げてよ こした花鰹のパックが主任の頭にあたっ
 て血相変えて叱られた話。異常なまでの怒り よう。それが花鰹だったからって話。
 主任の頭がそういえば花鰹みたいだと。なんか花鰹って言葉がやたら可笑しくて。」
友人の声「とにかく盛り上げたさ。」
青年の声「肝心な事は何も話してない。」
友人の声「そうだ。あいつのセイだ。あの野 朗が邪魔しやがった。」
   盛り上がっているコ-ナ-に、一人のリ-ダ-らしき学生が近寄って来て、
   大声で彼女達に声をかける。
リ-ダ-「きみたち-っ。差し入れのオヤツ が来てるよ-っ。早く来るようにっ。」
   とまどう彼女達。
   すると近くまで来て
リ-ダ-「君達の椅子はあっちにあるから」   
   と言って促す素振り。
   仕方なく席を立つ二人。
友人「じゃあ、またねっ。」
   と言って小さく手を振る。
   離れぎわに微笑みで答える彼女。
   青年への視線には特別なものが。
   遠ざかる二人の横を、偶然通りかかる花鰹頭の主任と、それに気づいて顔を
   見合わせて笑い合う二人の後ろ姿。
                                   (WIPE)

この空の青さは③

〇大学の広場(ベンチの二人)
   突然思い付いたような顔をして、青年の方を向き、大声で
友人「オイッ。喜べっ。彼女は本物だぞっ。お前の本物の、相手だっ!。」
   冷静な感じで微笑む青年。
青年「いまさら何だよ。俺が。誰よりも。いちばん。わかってる。」
   拍子抜けて、細かく頷く友人。
友人「それにしても、金持ちの御ぼっちゃまが、なんであんなバイトに来るかねえ。」
青年「御酔狂さ。ハゼ釣りなんだ。」
友人「ハゼって、つまり、ダボハゼ。バカでも釣れる・・」
青年「俺は或る日とんでもない話を聞いた」
友人「えっ、何。聞いてないぜ。」
                                 (WIPE)
○回想(流通センタ-内(男子トイレ))
   休憩時間で混み合っているトイレに入っ行く青年。
   どの便器にも列ができていて、三人程の順番に付く青年。
   すると前の男が隣の男に話かける。
学生A「ヨオッ。また来てんのか。」
学生B「オオッ。お前こそ。」
学生A「そりゃあ来るさ。どうだ、今度って 可愛い子多くないか。」
学生B「(細かく頷き)当たり年かもね。」   と言って含み笑いを交わす。
学生A「なにしろ、ここじゃ、餌なしで釣り たい放題さ。」
学生B「まるっきりハゼ釣りだ。」
学生A「言えてる言えてる。できれば大漁ブ ネで帰りたいもんだ。」 
学生B「ハハハッ。お前には負けるわ。」
   順番が来て用をたす二人。
学生B「俺はしっかりと一本釣りだ。キャッ チアンドリリ-スでさ。」
   頷きながら首を伸ばして覗き込み
学生A「ヘエ-ッ。それで何が釣れるの。」
   身体で隠すようにして
学生B「だからハゼ。なるべく大きいのを」
   と言って覗き返したあと
 「お前はメダカでも掬って一杯持ってけ」
   と言い合いして笑い合う。
   無表情で固まったような青年の横顔。
   そのままで突然クルッとこちらを向く。           (WIPE)

〇大学の広場  
   ふたたびベンチの二人
友人「くそっ。ぶん殴ってやりてえなあっ、そんな奴ら。なんてえこった。蹴飛ばすく
 らいはしてやったんだろうなあ。」
青年「ははっ。出来るかよ。足くらい踏んづけてやりたいとは思ったけどね。」
友人「俺ならやってたな。キュッてな。」
青年「だけど、一概には否定できないからな。そういう生き方もあるってことさ。」
  「ただ、相手を間違えてもらっちゃ困る。それだけの事だ。」
友人「へーえ、寛大なんだなあ。」
   ここぞとばかりに手振りを付けて
青年「その心、アルプスの如く気高く、泉の如く清く、湖の如く深し。」
友人「何だそれ。誰が言った。誰の事。」
青年「(屈託なく)俺が言った、俺の事。」
   感心した様な顔の後、パンと膝を叩き
友人「お前は彼女を幸せに出来る。それに、彼女はハゼでもメダカでもないっ。」
  「彼女はお前のものだっ。」
青年「(一寸ニッコリして)うれしいねえ。決めてくれちゃって。だけど、何も決ま
 ちゃあいないんだなこれが。」
友人「決めるんだよ。飛んで行ってでも。」
青年「どうやって。俺はス-パ-マンでも何でもないんだぞ。二流大学の、それも落ち
 こぼれだ。・・・ス-パ-マンに変身したいよ。」
友人「ボロは着てても心は錦だ。お前自分で言ったじゃないか。本質と本質が引き合っ
 たって。・・だから意味が有るんだろ。・・だから価値が有るんじゃなのいか?」
青年「それにス-パ-マンだって、SOSが聞こえて初めて飛んで行けるんだ。」
友人「でも、そう言えばあの時、結局お前、とりあえず飛んで行ったじゃないか。」
青年「ああ。行った。行ったさ・・・」
友人「聞こえたんだろ。SOSが。」
青年「ああ。聞こえた。・・・いや、と思った。」
                                 (WIPE)
〇回想(デパ-ト社員通用口(夜))
   勤務明けの女子アルバイトがゾロゾロ
   と出口から出てきている。
   それを、少し離れた所から、遠目に見つめている二人の後ろ姿。
友人の声「バイトも大詰めの頃、本店勤務っ て分かって、俺も気になっちゃって、
 それで二人で、とりあえず行ってみたら…」
   友達と二人で出てくる彼女。
   すると、待っていた二人の学生風の男が近づいて声をかけ、そのまま横に付いて
   並んで歩い
   て行く。思わず顔を見合わす友人と青年。
   暫し呆然とする二人だが、気を取り直して、どちらからともなく後を追う。
   奇麗な街のクリスマスの明かり。
   どことなく楽しげに見える四人の後ろ姿と、後に続く悲観的な二人。
友人の声「正直言って俺、あん時諦めたよ。 彼女のことダボハゼだと思った。」
   急に立ち止まって帰り出す友人。
しかし青年がその腕を取り引き戻す。
   また等距離で後を追う二人。
青年の声「世の中には、諦めていい事と、わるい事が、あるんだ。」
   暫くすると立ち止まる四人。
   ハッとして立ち止まる二人。
   向かい合って談笑しているが、よく見ると、何かを必死に断っている様子。
   最後に謝る様にお辞儀をして、潔い感じで男達を置き去りにする。
   唖然と見ていた二人だが、友人の小さなガッツポ-ズと、強く微笑む青年。
   今度は友人の方が青年の腕を引っ張り二人の後を追おうとする。
   置き去りの男達。一人がその場でタバコに火を付けるが、すぐに下に投げ
   つけて、踏みつけながら、盛んに首を傾げたりしている。
   その横をス-ッと通り過ぎる二人。
友人の声「なんて素晴らしい風景だ。」
青年の声「泥水を弾くが如くさ。」
   いつの間にか地下街を歩いている二人と二人。人混みのなか少し距離を置い
   て彼女達の背中を見ている。
友人の声「なんだか良い眺めでさ、そのままでズ-ッと歩いていたかった。」
青年の声「正直言って俺もそう。」
   薬局やブティックなどに少しずつ立ち寄る彼女達。
   その度に足を止めて、戸惑う様子の二人。
友人の声「なんだかスト-カ-やってるみたいで、ちょっと気が引けてきちゃった。」
青年の声「バカ。そんな物と一緒にするな」
友人の声「だけど、二人してここで声かけて、さっきのあの二人と何処が違うかだとか。
 同じように返し刀でついでに斬られちゃう様で・・・」
青年の声「お見事って感じだもんな。一緒にされちゃ困ることは確かだ。」
友人の声「結局、今日が最後かもしれないっ てことで、なんとかする事にした。」
   二人の前を行く彼女達、三叉路の所で立ち止まり、手を振って分かれる。
   同じく立ち止まって、顔を見合わせたりして極端に戸惑う様子の二人。
友人の声「どおするどおするって。兎に角、咄嗟の事だからな。だけどお前・・・」
   突然ポンと肩を叩いて、サッと手を振り、友人を置き去りにする青年。
   そのまま彼女の後を追う。
   唖然としてそれを見送る友人。
青年の声「ああ。行ったさ・・・。」
   彼女の後を追って行く青年の後ろ姿。
   しだいに人混みの中へと消える。
                                (WIPE)
〇大学の広場
   ベンチの二人
友人「俺あん時、感心したよ。お前ってやる 時ゃやるんだなって。一人で。よく行
ったよ。俺なんかとても・・・」
青年「一人だから意味があるんだ。」
友人「ふ-む・・・」
青年「使命を感じたんだ。」
友人「彼女のSOS。」
青年「いや。それよりも。何か、別の、もっと、大きいもの。」
友人「何、それ。」、
青年「・・・じつは、わかんない。」
友人「(ズッコケて)なんだよう。何かスゴ イ事かと思った。」
青年「ハハッ。結構そうだったりして。」
友人「先輩が解かりそうな事だなこりゃ‥。すごい大袈裟な話になるんだから。」
   笑って細かく頷く青年。
友人「それにしても、あの時俺、もう、ヤッタ-って感じで。メデタシメデタシって。
 喫茶店で祝杯あげてた。コ-ヒ-で・・。そうしたら、お前が・・・」
                                (WIPE)
〇回想)地下街の喫茶店
   時々思い出し笑いでニヤケながら、コ-ヒ-片手に外の人の流れをボンヤリと
   眺めている友人。
   すると間も無くして、どことなく元気の無い風の歩き方の青年が、独りでそこ
   を通り掛かる。
   それを見付けた友人、身を起こし一瞬様子を伺い、首を傾げる。
   少し考えた後、コ-ヒ-を飲み干して急いで伝票を取り席を立つ。
   飛び出して後を追うが、見失った様に立ち止まり、遠くを見て大きく首を傾げる。
                                 (WIPE)
〇大学の広場
   ベンチの二人
青年「どう見えた?。」
友人「ハッピ-には見えなかった。」
   頷く青年。
友人「落ち込んでた。」
青年「そうかなあ…。考え込んでたんだよ。 どういうことなんだろうって。」
友人「どうだったんだよ。肝心な所だぞ。」 
  「俺は見てないんだから。本当のところ、どうだったんだ。」
青年「予想とは違ってた。」
友人「どんな予想?」
青年「まったく自然な予想さ・・・」
友人「だから…。」
青年「近づけば、ただそれだけで、すべてが 始まるだろうと。」
  「本当にそう思った・・」
                               (WIPE)

この空の青さは④

〇(回想)地下街
 ※(「無音」でバックに挿入歌「シクラメンのかほり」のインストルメンタル)
   独りで歩く彼女の後ろ姿。
   それに向かって潔くどんどんと近づいて行く青年、横に並んだところで何や
   ら声をかける。
   何気なく横を振り向く彼女。
   青年の顔を見て驚き、一瞬立ち止まるが、すぐに恥ずかしそうな顔になって
   ゆっくりとした速度で歩みを続ける。
   「びっくりしちゃったわ」という仕草で胸に手をあてて笑う彼女。
   爽やかに微笑みながら何やら話かけ青年と、時々下を向いたりして恥ずかしそう
   にしながらも、幸せそうな雰囲気で受け答えする彼女。
青年の声「とりあえず彼女は逃げることもなくて、思いのほか落ち着いて話ができた」
 「周りの音が何も聞こえなかった。」
 「彼女の言葉が沁み込んできた。」
 「俺の言葉が沁み込んでいった。」
 「必要なものが何かが、わかった。」
 「彼女は嬉しそうだった。」
 「確かに、嬉しそうだった。」
 「本当に全てが始まるような気がした。」
 「・・・だけど。どうして。」
                                (WIPE)
〇(回想)地下街
 ※(「無音」でバックに挿入歌「シクラメンの香り」のインストルメンタル)
   独りで歩く彼女の後ろ姿。
   それに向かって潔くどんどんと近づいて行く青年、横に並んだところで何や
   ら声をかける。
   何気なく横を振り向く彼女。
   青年の顔を見て驚き、一瞬立ち止まるが、すぐに恥ずかしそうな顔になって
   ゆっくりとした速度で歩みを続ける。
   「びっくりしちゃったわ」という仕草で胸に手をあてて笑う彼女。
   爽やかに微笑みながら何やら話かける青年と、時々下を向いたりして恥ずか
   しそうにしながらも、幸せそうな雰囲
   気で受け答えする彼女。
青年の声「とりあえず彼女は逃げることもな くて、思いのほか落ち着いて話ができた」
 「周りの音が何も聞こえなかった。」
 「彼女の言葉が沁み込んできた。」
 「俺の言葉が沁み込んでいった。」
 「必要なものが何かが、わかった。」
 「彼女は嬉しそうだった。」
 「確かに、嬉しそうだった。」
 「本当に全てが始まるような気がした。」
 「・・・だけど。・・・どうして。」
                                (WIPE)
 〇大学の広場  
   ベンチの二人
友人「それにしても、お前、一対一でさあ、よくやるよ。・・・俺だったらもう、心臓
 が 持たねえな。」      青年「……だから言ったろう。あの時って、本当に
 自然だったんだ。・・・そりゃあ一寸は不安が有って、緊張したけど、一言交わした
 ら、もうそんなの無くなっちゃって。不思議なもんさ。信じらんないくらい静かなんだ。」
友人「へえ・・・。」
青年「あんな落ち着いた気持ちになれるとは、実は予想外だったなあ……。これが本当
 だと、そのとき思った。」
友人「ふ-ん・・・。」
青年「本当の相手だと、そのとき思った。少なくても、俺はそれが確認できた。」
友人「・・・だけど。なんだろ。」
青年「(細かく頷き)ああ・・・。」
友人「それにしても何を話したんだっけ。」
青年「バイトの事とか、とりあえず何でもないことさ。本当あん時の続きって感じ
 だよ。クリスマス、何かあるの?って聞いたら、別に何もって。家族でケ-キ食べ
 るって…。俺もうホッとしちゃって、平和なんだねって言ったら、笑ったよ。・・・
 おいしいケ-キを買って行くのが役目なんだって。それで俺が、その為に一生懸命バ
 イトしたんだって言ったら、もう、彼女が、笑った。ハハ、ハハハ。・・・それで、
 俺も同じだって。ハハハハ。」
   空しそうに大声で笑う青年。    
   友人つられて少し笑いそうになるが、すぐに冷めたような顔で見て
友人「だ、け、ど、……なんだろ。」
   ゆっくり頷いて
青年「結局、駅んとこまで来ちゃって、それで立ち止まって。本当に別れたくなくて。
 面と向かって、俺は・・・。・・・。」
   思わず身を乗り出して
友人「なにを、何を言ったんだ。聞いてないから。教えろよ。重要なとこだぞ。」
青年「だから、別れたくないって事をさ。・・・自己紹介もしてないままだし。もっ
 と話がしたいと言ったんだよ。いちばん正直なことを言ったんだ。目を見たら、彼
 女、紅くなって・・・。俺は、笑わそうと思って。・・・このまま一生ず-っと話
 していたいくらい、なんだって。そう言ったら、・・・そう言ったら・・・」
   さらに身を乗り出して
友人「そう言ったらッ?・・・」
青年「彼女、笑ったんだけど、それがちょっとへんで。時計を見たりして、時間が無い
 とか言い出したんだ。冷たい顔で。」
 「そしたら俺、急に、血の気が引いてきちゃって、力もス-ッと抜けてきちゃって。
 彼女が遠-くの方に見えてきて・・・」
友人「・・・それで、どうした?」
青年「どもしなかった。・・・俺は誰で、ここは何処で、何をやってんのか・・・
 わかんなくなって。・・・残念だねって言うのが精一杯だった。それだけだよ。」
友人「(大きく天を仰ぎ)・・・。」
青年「じゃあっ。て、言ったさ。・・・俺はもう振り向かなかった。・・・急に自分が
 アリのように小さくなって、情け無くて。・・・とんでもない人違いをしたもんだと
 か思おうとした。・・・それにしても、本当にそうだったろうかとか、どしてかとか、
 考えちゃって。・・・実は一寸気になって振 返ったら・・・やっぱり何も無くて。」           
   この間のセリフに被って、二人の様子が、要所要所で短いカットバックや
   ストップモ-ションで挿入される
   最後は、実は逆に置き去りにされた様に青年の方を見て立ったままだが、暫くして
   どことなく寂しそうに、その場を去る彼女の姿。
   その後一瞬振り向く青年。
   先程の喫茶店を通り掛かる青年。                
                                 (WIPE)
            
〇大学の広場                 
   腕組みして考えこむベンチの二人
友人「まるでビデオ観た様によく解ったよ。 ・・・それにしてもよく覚えてるんだな。」
青年「そりゃあそうさ。どういう事なんだろうって、毎日の様に考えてたからなあ。」
   頷きながら
友人「結局、解んなかったよなあ・・・。あん時はまだ先輩も居なかったことだし。
 解りようがねえや。日本的恋愛論なんて考えもしなかったもんな。そんなもんかよ、
 仕方ね-なっ、てなもんで・・・」
青年「まったくもって、一巻の終わりだった」
友人「そんでもって寒-い冬が来た。」
青年「ああ。だけど。・・・だ、け、ど、なんだよな。」
友人「俺、てっきりお前は諦めちゃったもんだと思ってたんだけど、違ってたんだ……」
青年「そう。し、か、し、なんだよなあ、これがまた………。」          
   と言って明るくなりニッコリすると、つられたように微笑んで
友人「糸が切れてなかったんだ・・・。そりゃそうだよな。あのインスピレ-ションだ。
 それで、月曜日の3時と、水曜日の4時のあそこ……。」
青年「(ニッコリして頷き)………。」
友人「同じ曜日の同じ時間に彼女があそこを通って、同じ曜日の同じ時間にお前があそ
 こに居る・・・。そんでもって、彼女がお前を見て、お前が彼女を見てる・・・。」
青年「(真面目に頷き)………。」
友人「………ふ-む。……ふ-む………。」
   (探偵ドラマ風の曲が一瞬流れて)
友人「(ものまね風に)ん-、ちょっと待って下さい-。これは重要な事です-。確認
 したいのはその時の彼女の様子、つまり、表情とか仕草、あるいは行動の事です-。」
 少し苦笑いをして友人の顔を見る青年
 「(更に続けて)つまりこうなんですね、・・・その時彼女は例えば、迷惑そうだった
 り、呆れたような、馬鹿にしたような、はたまた無視する様な、そんな感じではないと。
 そういえば私も一度見てます。・・・ふ-む。同じ曜日で同じ間。ふ-む。う-ん」    
   (以前の彼女の通学路での様子が、端的なカットバックで挿入される)  
   真面目な顔をして頷いている青年の顔を見て
友人「おいっ。止めてくれよっ。」
   と言った後オ-バ-に手を打って
友人「(大声で)ヨシッ。ワカッタッ。彼女はお前を好きだ。彼女は、お前を待ってるっ。
 ・・・ヤッタヤッタ-。コノ-、コノーーッ!」             
   と言って、肩を叩いたり、こついたりしてはしゃぐ。
   笑いながらも少し迷惑そうにして
青年「いや-、そうかな-、ほんとかな-。だといいな-、嬉しいなっ。」
友人「惚けんなよっ。自分が一番知ってるくせに。そんな場合じゃないんじゃない?」
青年「わかってるよ。やるべき事もさ。」
 「だけどだなあ・・・。タイミングってのがあるんだよ。それに案外難しそうだ。」
友人「そうかなあ・・・。」
青年「実は俺、あん時のダメ-ジがけっこう残ってて、どうもスンナリと行かない。」
友人「それってつまり、力石徹を死なせたテンプルが打てなくなっちまった矢吹丈。」
青年「はは、その通りかも。」
友人「重症かよ。だとしたら困ったなあ・・・。」
青年「わかんないけど、おかしいんだ。」
   フッ切る様に天を仰いで
友人「それにしても-、彼女って-、ほんとうに-、奇麗だなあ-。・・・。」
   と、横目でチラリと青年を見る。
青年「(同じ様に天を仰いで)・・・。」
友人「彼女の顔見たら、なんとかなっちゃうんじゃないの?現にお前、ひき付けられて
 行ってるじゃないか毎週さあ。それって自現象だと思うぞ、俺。」
青年「(驚いた様に)お前、時々凄いこと言 ってくれるな・・・それ、いただきっ。」
友人「なっ。だろっ。つまりよ。なんとかなるって事よ。慌てるなってかもね。」
 「それにしても腹減ったなあ。」
   と言って急に立ち上がり
 「(時計を見て)いい時間じゃんかっ。メシ メシ、メシ喰いに行こっ。頭使ったら、
 腹減っちゃった。丁度いい丁度いい。・・・そうだっ。先輩がいるかもしれんぞ。」 
   背伸びして青年も立ち上がる。

〇大学内の歩道                
   食堂に向かう二人の後ろ姿。    
   街路樹の木の葉に飛びつき、それを散らして、友人がシャドウボクシング。
   テンプルを打つ真似をさせたりして、彼女の事で青年を明るくからかう様子。
   新緑が緑に輝く並木の青葉。          
   その上に広がる青い空と白い雲。                (O・L)   
  ※(挿入歌「シクラメンのかほり」はじまる) 
   冬から早春へと自然を撮り歩く姿と、青年と関る彼女のこれまでの全ての姿が、
   (O・L)の連続で次々とタイミングよく描かれていく。         

    ・真綿色したシクラメンほど清しいものはない
    ・出逢いのときの君のようです
    ・ためらいがちにかけた言葉に 驚いたように振り向く君に
    ・季節が頬を染めて過ぎて行きました
    ・呼び戻すことができるなら僕はなにを惜しむだろう
  

    最後は彼女の数種類の美しい表情。             
                                  (F・O)          
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写真集「四季の肖像」の作者です。
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