スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

この空の青さは⑦

〇街角の広場(いつものベンチ)
   頭に手を組み天を仰ぎ物憂げな様子。
青年の声「このままで良いわけないって、彼女にも思ってもらいたいんだ。」
友人の声「彼女があそこを通って、その時そういう雰囲気だったら、決まりだ。」
青年の声「その通りなんだけど・・・。」
   いつもの方向へ眼を向ける青年。 
   いつもの女子大生の流れ。
   次第にスローモーションになり、音も消える。
友人の声「そういえば、彼女だってべつに名門って訳でもないんだし、勇気出せよ」
青年の声「そんな事は関係ないよ。」
友人の声「オイッ。喜べ。彼女は本物だぞ。お前の本物の、相手だっ。」
友人の声「お前は彼女を幸せにできる。それに彼女はハゼでもメダカでもないっ。」
友人の声「よしっ、わかった。彼女はお前を好きだ。彼女はお前を待ってる。」
友人の声「お互いが本気で好き同士を確認し合っての恋愛なんか有るもんかって。」
友人の声「本物だぜあれは。お前と彼女が常識をぶっ壊せ。百パ-セントなんて嘘だ」
   スローモーションが大きくなりドク、ドク、ドク、ドク」と心臓の鼓動音が起る。
   すると暫くして彼女が現れる。
   独りの彼女。
   どこか緊張感を漂わせ、中央付近で、またおもむろにこちらの方を見る。
   すぐにまた前を向きそのまま歩いて行くが、俯くその姿がどこか淋しそう。
   心臓音が消え沈黙となって、もう一度その様子をアップでとらえる。
   それは幸せと淋しさが合さった表情。
   それを見つめる青年。
   超スロ-モ-ションでとらえるその時の彼女の決定的な表情。
   突然すべての音と速度が戻り、そのまま歩いて行く彼女、流れて消える。
   正面を向いて考える様にして暫くの間身動きできずにいるが、突然ハッとしたよ
   うに立ち上がり後を追う青年。

〇地下鉄のりば
   見失って人混みのなかでキョロキョロとする青年。首を傾げる。

〇地下鉄ホ-ム
   それほど混んでいないホ-ム。
   すぐ近くの乗車口に目立つように立っている彼女。
   程なくそれに気づきハッとなる青年。
   しかし身動きできずにいる。
   真っ直ぐ前を向いたまま何とも言えない横顔で佇む彼女と、対峙するように
   それをじっと見つめる青年。思い切って一歩進み出る。
   すると電車が到着し、降りる客で混んだ後そのまま乗り込む彼女。

〇地下鉄車内
   ドアが閉まりかけになって初めてハッとして、思わず慌てて乗り込む青年。
  ※(挿入歌『愛が壊れそう』が流れる)
   一つ隣から入った青年、人混みの間から恐る恐る彼女の姿を捜す。
   人の間から見える彼女の姿。入り口の反対側のドアの窓にピッタリと貼り付
   いた様になり真っ直ぐ外を見る彼女。
   期待と恐れが混じり合った様な表情。
                                 (O・L)
〇地下鉄のりば(回想)無音
   先程の、彼女を見失ってキョロキョロする青年。しかし彼女はその手前の横
   の壁に佇んでいて、それを見ている。
   一瞬肩を窄めて悪戯っぽい微笑をうかべるが、はにかむ様な緊張感が漂う。
   グルッと見回すが気づかずにいる青年首を傾げながら切符売場の方へ行き、
   何やら切符を買って改札を入って行く。
   それを見ていた彼女、暫くそのままでいるが、おもむろに同じ改札を入る。
                                 (O・L)
〇地下鉄ホ-ム(回想)無音
   先程の、ホ-ムのベンチにいる青年。
   それを見つけた彼女、一瞬とまどうがそのまま進み、見えるような微妙な位
   置の乗車口に立つ。緊張した表情。               
                                 (O・L) 
〇地下鉄車内
   人の間から青年の姿を見つける彼女。゛
   ドアのガラスに貼り付いたまま黒い窓の外をじっと見つめる。    
                                 (O・L)
〇回想
   バイトの時、遠くから青年をひっそりと見つめる彼女の幾つかの表情。
                                 (O・L)
〇地下鉄車内
   ドアのガラスに貼り付いたままの彼女。
   或る駅で停車してドアが開くと、そのままの表情で電車を降りる彼女。
   気がついて慌てて飛び降りる青年。 
〇地下通路
   そのままの表情で通路を真っ直ぐに歩く彼女。
   青年の肩越しの彼女の後ろ姿。
   
  ・ガラスの扉を叩くのは誰       ・ためらう私を許してほしい
  ・きまぐれな言葉かと震えています   ・幸せが重すぎて震えています
  ・いつも笑顔でおどけてみせる    ・いつも帰り道あなたの愛を
  ・爽やかなその仕草胸にやきつく    ・かみしめてその言葉繰り返してる
  ・一度でも愛してると言えば      ・明日には愛してると
  ・あなたは喜んでくれますか      ・幾度想って夢を見たことでしょう
  ・ガラスの扉を開ければすぐに     ・ガラスの扉を開ければすぐに
   ・壊れそうこの愛が 風が強くて   ・壊れそうこの愛が 風が強くて

 
   歌が終わり彼女角を曲がって消える。
   暫く立ちすくむがまた歩き出す青年。
  (再び『愛が壊れそう』の伴奏がスリリングに流れだすが、青年が同じ角を
   曲がったところで音楽が消える)
   長い通路の先を行く彼女の後ろ姿。
   立ち止まる青年の後ろ姿。
   突然振り向く思い詰めた様な表情
                                  (F・O)
 (F・I)
〇想像(1)
   同じ伴奏と共に彼女に近づいて行き、
   並んだところで何やら声をかける。
   (以下同様にコマオトシふうの映像と少しエコ-のかかった音声)
青年「やあ、こんにちわ。」
   驚いた様に歩きながら振り向いて
彼女「ああ、びっくりした。」
   と言って胸に手を当てはにかむ。
青年「驚かせてすいません。」
   と優しい笑顔で言うと、歩いたままに俯いて黙っている彼女。
青年「少し時間いただけませんか。」
彼女「(俯いたまま)私、急ぐんですけど」
青年「ほんの少し。つまりお茶でも。」
彼女「俯いたまま)本当に急ぎますから。」
青年「またそんなことを言うの?」
彼女「(俯いたまま)・・・。」
青年「どうしても君と話がしたいんだ。」
   すると急に立ち止まり、顔を上げて
彼女「(困った様な顔で)話って何ですか?。だいたいどうしてあなたがこんな所に
 いるんですか?困るんですけど。」
青年「(驚いた顔になり)いや、その・・・」
彼女「失礼しますっ。」
   と言って歩き出す。
青年「あの、ちょっと、・・・。」
   立ち尽くす青年を置き去りにして足早に去って行く彼女の後ろ姿。

〇想像(2)
   同じく伴奏と共に彼女に近づき
青年「やあ、こんにちわ。」
   驚いた彼女一度ふり向きペコリとするが、何も言わず緊張して歩き続ける。
青年「驚かせてすみません。」
彼女「(無表情のまま)・・・。」
青年「少し、話、いいですか?」
彼女「(引き攣った様な微笑みで)あの、私急ぎますから。」
青年「ちょっとでいいですから。」
彼女「(更に引き攣って)すみません。」
   と言ってだんだん足早になる。
   ついて行くのがやっとの青年。
青年「いや、その、・・・。」
   走り出す彼女と諦めて立ち止まる青年。
   どんどん遠ざかる彼女の後ろ姿。

○想像(3)
   同じく伴奏と共に彼女に近づき
青年「やあ、こんにちわ。」
   極端に緊張した彼女一瞬ふり向きペコリとするが、すぐに足早になる。
青年「あのっ・・・どうして僕ここに居るんだろうねッ?」
   と言うと、一瞬足を止めて、首を傾げた後
彼女「・・・もういいです。」
  と言って、足早に歩き出し、とうとう走り出す。
青年「あのうっ・・・!」
   立ち尽くす青年の後姿と、遠ざかって行く彼女。

〇想像(4)
  同じく伴奏と共に近づく青年。
  その気配に気づいた彼女、ちょっと後ろを振り返った後だんだん足早になり、
  そのまま逃げる様にして行ってしまう。
  思わず追いかけるが諦める青年。
  ポツーンと置き去りになる。
                                白く(F・O)
 (F・I)
〇地下通路
   現実の青年、諦め顔で
青年「・・・だめだこりゃ。」
   と言って再び振り返る。
   前方の現実の彼女が出口へと姿を消す。
   『フ-ッ』と一つ大きな溜息をつき、人気の疎らな長い通路を肩を落とした
   様にゆっくりと帰る青年の後ろ姿。
※(挿入歌『夕ぐれの河に』が流れる)
              (                    O・L)
〇夕暮れの街角
   灯の点り始めた黄昏の街角をそのまま淋しそうに歩く青年の姿。
   電飾のネオンや流れる車のライト。
   なぜか目に付く都会の暗い夜の一面。
   援助交際ふうのコギャルと中年のカップル。
   酔っ払いや車同士の小競り合い。
   風俗店の下品な看板。
   呼び込みに声をかけられる青年。
   すべてに気をとめず、通り抜ける青年。
   橋の欄干に肘をついて夕空を見つめる。

   ・夕暮れの河に僕は         ・閉じ込めた愛の重さを
  ・小石を投げています       ・心が支えきれなくなって ああ
  ・あなたは空を見ています     ・夕暮れの河に僕は
  ・僕の投げた石は河のおもてに    ・小石を投げています
  ・淋しい音を残して沈んで行きます ・ほんとは愛を投げてます
  ・あなたに愛を告げることは     ・君に告げる筈の僕の愛が
  ・桜貝をこわすようだと       ・淋しい音を残して沈んで行きます
  ・自分ひとり信じこんで
 

    川面に映るネオンや黄昏の色に波紋が広がる。
                                 (WIPE)
〇青年の実家(夜)
   住宅街の一角の慎ましい一戸建て。

〇同リビング
   奥の流しで洗い物をする母と、ーそれを尻目にソファ-で一人でテレビのトレ
   ンディ-ドラマを観ている妹。
   暫くして青年が現れて離れて座る。
青年「これ、けっこう面白いんだってな。」
 「どうなってんのこれ。」
妹「チョット黙ってていいとこなんだから」
青年「なんだか盛り上がってるみたいだなあ。この辺でオシマイだろ今日は。
 絶対だよ。トゥ-ビ-コンチニュ-てなもんだ」
妹「シ-ッ。うるさいうるさい。あっ」
青年「ほら、な。」
妹「も-、観てないんだったら来ないでよっ」
青年「予告編、予告編。相当モチャカッテルみたいだなあ。へえ、へえ・・・。」
妹「何よ、ケチでもつける気。視聴率すごいんだから。み-んな観てるのよっ。」
青年「知ってますよ、面白いことは。だけど結局は三角関係の話なんだろ。」
妹「そうよ。それがいいんじゃない。」
青年「赤い糸があっちこっちでコンガラガッチャッテ、切れたり結んだり、そういう
 話だろ。阿弥陀くじみたいな。」
妹「かもね。だけど本当にいいとこはね、いろんなライバルとか障害とかが有って、
 そういうのを乗り越えて初めて本物の愛をつかむとこなの。それが本物の恋愛なの。
 つまりねえ、みんな本物が見たいわけ。」
青年「本物の恋愛か。先生言ってくれますねえ。ご経験が沢山お有りのようで。」
妹「ばか、そんなの有るかよ。」
青年「ははは。だけど典子よかったよ、お前、女子高で。毎日平和だろ。・・・さも
 なきゃ大変だぞ今頃。ちょっと美人だと寄ってタカってもうヒッチャカメッチャカ始
 まっちゃうから。そうなったらもう理想もクソもないからな。よかったよ平和でさあ。
妹「(気を良くして)そう。そうかもね。」
青年「若い時に理想をうんと高くしておかなきゃ駄目なんだ。途中で勘違いして出来上
 がりなんて事になっちまうんだからさあ。その調子で磨いとくといいよ。」
妹「良いこと言うわねえ。・・・それって、つまり私が美人ってこと?」
青年「(苦笑いして、小声で)そう取るか。・・・実はちょっと典子先生に一つ聞
 いてみたいことが有りまして。」
妹「なに・・?」
青年「例えばだけど。自分の理想の相手が突然現れて、じつは相手もそうで同時に一
 目惚れしたとする。いいか・・・そんでもって、そのことがお互いに分かっちゃっ
 たら・・・、どんな感じ?」
妹「どんなって、嬉しいに決ってるじゃん」
青年「そうか。ほんと。そうかなあ・・・」
妹「当り前でしょう。相思相愛なんだから。この世はバラ色-って感じ。」
青年「ははは、そうか、そうだよな。」
妹「もう-。なに寝惚けてんのよ全く。」
青年「じゃあ、その相手が、ある日ほんとうに告白してきたら、つまり好きだって事
 をだけど、・・・どんな感じ?」
妹「そりゃあもう嬉しい極致よ。当然。」
青年「ほんとに?。それだけ?……」
妹「何よまた-。本当に決ってるでしょう。嬉しすぎてブッ倒れちゃうくらいよ。」
青年「ブッ倒れちゃう・・・?」
妹「そう。本当にブッ倒れるかもしれないわ」
青年「どうして?」
妹「・・・さあ-。・・・だってぇ・・・」
青年「恥ずかしいから?」
妹「・・・。そうかもしれない。・・・そう、 そうねえ。小っ恥ずかしいって感じ。」
青年「それでどうする。やめちゃうのか。」
妹「・・・まさか。始まるのよ-。(身振りを付けて)パララ-ララ-ッて。」
青年「そうか・・・とにかく嬉しいんだな。」
妹「そう。そりゃもう究極的。バラ色を通り越して虹色ね。だからラララーララー・・」
青年「解った。サンキュ-。もういいよ。」
妹「なにそれ。へんなの-ー。」
青年「つまり最大のライバルは自分だっちゅう事だよ。一対一の恋愛ができなくちゃあ
 三角関係もクソもないからな。わかる?。」
妹「(首を傾げながら頷いて)・・・?。」
青年「まあ、その時になってみないと解んないと思うけど。それまでに負けない自分っ
 てものを作っておかないとな。典子も。」
妹「えらそうに-。・・・何か有ったの?。」
青年「ノ-コメント。・・・」
妹「もう-。」
                                 (WIPE)
〇大学食堂(午後)
   青年と友人が窓の外を見ながら向かい合って座り寛いだ感じで話している。
友人「そうか。バラ色で虹色で、嬉しくって、ブッ倒れそうで、小っ恥ずかしいか。 
 ・・・なるほどねえ。」
青年「まあ、正直なとこだと思う。」
友人「嬉しいのはいいんだけど、恥ずかしくってブッ倒れちゃって、ヤ-メタなんて事
 になったら、・・・困るよなあ。」
青年「妹は始まるって言ってるけど、何ぶん空想の世界だから。あいつの場合。」
友人「それにしても、そういう物にもやっぱり憧れてはいるんだなあ、今時の女子高生
 なんかでも。」
青年「そりゃあそうさ。そうでなきゃ。」
友人「ロミオとジュリエットが古いなんて誰も言わないもんな。・・・あんなヘビ-
 で暗い話、古臭くてペッペッなんてことになったら、世の中おわりだよな。」
青年「空のトンビに負けちまう。」
   と言ってボンヤリ空を見上げる。
   つられて友人も空を見る
    すると突然、先輩の大きな声。
先輩(声)「そうっ。そのとおりっ。」
   驚いて振り向く二人。
友人「センパ-イ。」
先輩「(椅子に座りながら)そうなったら、本当に世の中おわるぞ。いいか、本当に
 だぞ。全くもって本当に終わる。」
友人「またまた。先輩、大袈裟なんだからあ。」
   言葉を遮断するように手を差し出して
先輩「残念ながら大袈裟じゃない。つまり、恋愛のあり方というものが、人間にとって
 それだけ重要なものだという事だ。」
   と言い終えてサッと手を下ろす。
   言い知れぬ説得力にしばし唖然とする二人、思わず顔を見合わせる。
先輩「わかるか。え?」
   揃ってウンウンとしきりに頷く二人。
先輩「まさしくトンビに負けるって話だ。」
青年「トンビ、イコ-ル自然だから、つまり 自然に負けるって事ですね。」
先輩「そ-ゆ-事だ。解るじゃないか。ダテに自然写真やってるんじゃないんだな。」
   にっこり微笑む青年。
先輩「自然に負けるような恋愛やってたら、そのうち絶対に人間は滅びる。これはもう
 本当に間違いない。種の保存の原理だ。」
   顔を見合わせ二人ボソボソと
友人「(小声で)種の保存だって。なんかスッゲエ話だぞこれ。お前解るか。」
青年「(小声で)なんとなくだけど、すごく解る気がする。ウンウン。」
先輩「そりゃあ急に滅びる話じゃないけど。いい加減な恋愛が何を生む。本当の恋愛を
 忘れた人間の将来が想像できるか。」
友人「わかった。エイズのことでしょう。」
先輩「当然それも有るさ。破滅への警告だよ。正にな。性道徳がブッ壊れたら世
 の中おしまいなんだよ。人が恋愛の本当の意味をを忘れちまえば当然そうなる。」
友人「性道徳ねえ・・・。道徳ですか、つまり」
   大げさな身ぶりで一括するように
先輩「そうとも。道徳だよ。おかしいかい?。道徳を馬鹿にするんじゃないぜっ。」
   ぴんと来てない友人の顔色を見て
先輩「どうした。おかしかないぜ。」
友人「なんだか先輩らしくないような気がするんですけど。先輩って、既成概念をぶ
 っ壊すっていうか・・そんな感じで・・道徳っていうの・・意外っていうか・・」
先輩「ははは。なるほど。心配ご無用。俺が言ってるのは本物の道徳の事なんだよ。
 道徳は言ってみりゃあ道標みたいなものなんだからしてな。その道標がぶっ壊
 れてたら困るんだ。グラグラぶらついてても困るってもんさ。・・だろ。つまり、
 その道標が本物かどうかって事だな。本物ならそれは大いなる道標なんだよ。
 迷わずその道を行け・・・だ。法律にしろ道徳にしろ、これは人類の知恵の賜物さ。
 それが出来た意味を知って尊重し大いに活用すればいい。」
青年「交通ル-ルのようなもんですね。」
先輩「それが人間社会ってもんだろ。信号なき交差点じゃあ困るんだよ。壊れてたら
 もっと困る。自由社会の掟かもな。本物の自由のことだよ。」
青年「本物の自由・・・」
先輩「自由の意味を履き違えたら大変だぜ。やりたい事をやりっ放しじゃ困るだろ。
 ル-ルってのは本来美しいものなんだよ。法律とか道徳とか、それが本物として
 ちゃんと機能してるかどかってことなんだ。その意味を知らずに盲目的に従ったり
 本質を忘れて運用を間違えても困るんだ。」
青年「つまり、本物談義って感じですね。」
先輩「それが本物かどうか・・・。考えなくっちゃあ。何事においてもだっ。」
友人「本物じゃなかったらどうするの。」
    大袈裟な手振りをつけて
先輩「簡単だよ。嘆く前に本物を探せ。自分が本物になれ。それが希望ってもんだ!」
友人「あっ、そうか、なるほど。」
青年「やった-っ。それですねっ。」
友人「ところで・・・本物の性道徳って・・・」
先輩「ははっ。それはだから、恋愛の本当の意味を知れば、自ずとわかる。」
青年「本物の恋愛・・ですね。」
先輩「そうさな。それを忘れちまったら大変ってことさ。壊れた標識のブラブラした
 矢印の先に何があると思う。恐ろしいぞ-。自由を履き違えた上にタガのはずれた
 今の世の中、かなり危ない所にまで来てる。」
青年「限界なんじゃないですか。ほんとに。」
先輩「そう本当だ。・・・だから、恋愛において俺が今問題にしたいのは、とりあえ
 ず実は最も基本的な事なんだ。本物の恋愛にまず必要なもの・・・つまり、本物の
 インスピレ-ションのことだ。」
友人「本物のインスピレ-ション・・・」
   と言って青年の顔を見る。
   真顔で頷いている青年。
先輩「そうとも。それはー、もう動物的な直感と言うべきものだな。本来人間が持ち合
 わせている極めて自然な本能でもあるんだ。本物の相手を見付けるためのな。」
友人「本物の相手・・・」        
   と言ってまた青年の顔を見る。
   真顔の青年。
先輩「そもそも恋愛というのは本物の相手を見つけるために有るものなんだよ。それ
 以外を恋愛と思ってたら大間違いだ。・・インスピレ-ションもファッションや
 子供の好き嫌いなんかとは訳が違う。」
青年「つまり内面的なものですよね。」
先輩「と言うより、本質的なものだな。外面も内面も全てに関わる本質って意味の。」
青年「本物の相手って、一人なですよよねえ」
先輩「そうっ。結果的にな。」
友人「結果的って…どういうこと」
先輩「ははっ。解らんか。なにも、それがこの世に一人しか居ないって言ってる訳じ
 ゃないんだよ。そんなものを捜せるもんか。一人で充分って意味さ。本物の相手は。」
友人「それにしても難しいよね。それを探すのって。」
先輩「それを捜すのは簡単だって言ってるだろ。それは本能だからと。本物のインス
 ピレーションは、本来、もともと誰にでも備わっているものなんだから。」
友人「(感心して)は-ー。」
青年「簡単だと思ったんだけどなあぁ・・・」
先輩「簡単じゃないところにこそ問題が有るんでして。つまり本物のインスピレ-ショ
 ンは大丈夫かっ?て事だ。先ずは本物かどうかを見極められて、その次にそれを如何
 に成就させられるかだ。さもなきゃ大変だって事。」
友人「大変ですかやっぱり。」
先輩「大変だとも。いいかげんな恋愛で間違えた相手と結ばれて良いこと有るわけない
 だろう。どんな結末か考えてみたまえ。」
友人「別れ。破綻。離婚ですよね」
先輩「それも有る。だがな、破綻するってえ事は必ずしも悪い事じゃあないんだぞ…。
 間違えに気づくってえ事だからなあ。悪いのは、気づかないってえ場合さ。」 
友人「深いですねえ-。」
青年「それにしても、別れるんだったら、最初から何も無い方がましですよね。」
友人「そうそう。ましましっ。」
青年「だれも別れることを前提としてなんかいないんだろうけど。」
先輩「別れることを前提としてる奴だって居るんじゃないかな。遊びってことでね。
 そんな連中は問題外さ。性病にでもエイズにでもなって勝手に滅びればいい。」
友人「なんと、ク-ルな・・・。」
先輩「遊ばれてて、それに気付かない馬鹿な女も滅びるしかないな。」
友人「ひえぇー。」
青年「遊えびと恋愛の違いって事ですね。」
先輩「そういうこと。その違いが判らんようになったらオシマイだ。ジ・エンド。
 違いさえ判ればいいんだ。先ずは。本物かどうか・・それさえ判りゃあ、いい。
 恋愛において、な」
友人「世の中・・・大丈夫でしょうか?」
先輩「相当に危ない。タガの外れた樽はブッ壊れる運命なんだ。無様なもんさ。この
 調子で行くと貞操観念が低い若者で溢れかえって医学的にも非常に危険な状況だ。
 本当に付き合ってるかどうか分からないままの曖昧カップルの多いことったら。
 とにかく本当に危ねえ。だから・・本物が見つかるまで、何もしない方がいい。」
青年「間違えてたんじゃあ、相手にも、本物の相手にも、申し訳ないですもんね。」
先輩「はっはっはっ。そのとおりだな。」
友人「とにかく、本物捜しに尽きますね。本物の相手ッ。」
先輩「なんとなくがいいからって事でとりあえず恋愛して、その相手が本物である確
 率がどれだけ有ると思う?とにかく、先ずは本物のインスピレ-ションが肝心なん
 だ。間違えたら恐いぞ。この国の将来と、人類の未来に関る大問題だ。」
友人「ドエ-ッ、来ましたねえ。」
青年「解りますよ。つまり恋愛イコ-ル種の保存なんですよね結局は。だから良い
 恋愛をしないといけないという事ですよね。」
先輩「そのとおり。人類が雄と雌に分かれちまってる以上、仕方ないことなんだ。」
 と言ってお手上げのポ-ズをとる。
友人「仕方ないって、それ先輩の嘆き?」
先輩「まあ、深いところでのな。」
友人「せ、先輩、まさかッ・・・!」
先輩「・・・バカヤロウ。何考えてんだ。俺が嘆いてるのは日本的恋愛の危うさだ。
 なんとなくがいいという風潮の危うさだ。ついでに強いて言うなら、そういう曖
 昧を美徳とする古い日本的な価値観が及ぼす様々なな場面でのこの国の将来への
 危うさなんだ。」
   暫く唖然とする二人。
先輩「まあ、そんな突っ込んだ話をするのは、今の君達には早すぎるとして、恋愛論
 についてくらい一度真剣に考えてみたまえ。」
友人「そりゃあもう考えてますよ。真剣に。ここんとこその話ばっかり。・・なあ。」
   笑って頷く青年。
友人「そういえば、先輩の言う集団的自我って、日本的自我って、どういうものなん
 ですか?今日こそ教えてくださいッ!」
青年「それと日本的恋愛との関係も・・。」
   面白そうに苦笑したあと
先輩「君達は直ぐにそうやって答を知ろうとする。問題に興味を持ってくれる事は嬉
 しいんだけど、もう大分ヒントも出してるだろう。君達を見込んでるからなんだぞ。
 それに俺だってまだ研究途中なんだから。」
   おどけて甘えるようにして
友人「もう解っちゃってるんでしょう。もう一つだけヒントほしいなあ・・・」
   大きくひとつ頷いて
先輩「考える気があるなら良いことだ。俺達みたいな歴とした日本人が日本人論を
 語ること自体に意味が有るんだからな。それに、オチコボレにだけしか見えないも
 のってえのが有るんだ。・・・まあ何にしたって、今こうして大学に居る間だけの
 特権でもあるんだから」
友人「先輩は大学院に進んだりしてその道の学者にでもなるつもりなんですか?」
   あっさりと首を横に振り
先輩「それは無い。ここじゃ俺は劣等生だからな。そんな進路はまず無いだろうし。
 学者になりたくてここにいる訳でもない。自分の為の真実の追求とでも言おうか
 な。謎が解ければそれでいいんだ。言ってみりゃあ、極めて個人的な研究なんだ。」 
   と言いながら取り出した紙にペンで大きく『曖昧』という字を書いて見せる。
青年と友人「アイマイ・・・?」
先輩「これが全てだ。しかしだ。これはあくまでもヒントでしかない。・・・そうい
 えば・・君達二人とも今、丁度、恋愛の壁にぶつかってる最中じゃなかったのか。」
友人「そう、俺なんかもうぶち当っちゃって、跳ね返されて、重症で療養中。だけど彼
はその真っ最中ですよ。羨ましいくらい凄く良い恋愛なんだけどなあ。」
先輩「だったらその壁を見るんだ。その壁の正体を見るんだ。・・・そこに答が有る。」
   黙って先輩を見つめたままの二人。すると空を見上げるようにして
先輩「今日はトンビは飛んでないかな……」
   つられて空を見上げる二人。
   青空に輪を描く二羽の鳶の姿。
                                (O・L)
〇大学歩道
   先を行く先輩とその後に続く二人。
友人「珍しい事も有るもんだなあ。いつもは 頼んだって乗せてくんないのに……。」
青年「コ-ヒ-まで奢ってくれるって言ってたぞ。・・・雨の気配は無いんだけどなあ。
 車でも買い替えたんかなあ。」
友人「(大声で)センパ-イッ。車替えたんですかっ?!」
   歩きながら振り返り
先輩「誰が替えるかっ。あの車はダメんなるまで乗るつもりなんだ。バイトして買った
 最初の車だ。お前ら馬鹿にしてるがなあ、あれだって曾ての名車なんだぞ。俺が最後
 を見取ってやると決めてるんだ。嫌だったら無理にとは言わんぞ。まあいいから今日
 は乗ってけよ。あとでキッチャテンで女の子の話でもしましょっ。」
   首を傾げながら後をついて行く二人。
〇大学駐車場
   極端に旧式のオンボロ車が側溝に片方
   の後輪を落としており惨めな姿。
   黄色の車体に木目のサイドパネルのサニーカリフォルニアである。
   その脇で唖然として立つ二人。
   おどけてとぼける先輩。
友人「なんかあるとは思ったよ・・・。」
                                  (O・L)
   車を上げるのに四苦八苦する三人。
※(挿入歌『夢追い人とだまされ屋』)
   石を置いたり、後ろを押したり。
   持ち上げてバンパ-を外してしまう友人と降りてきて適当に直す先輩。
   その横を無表情で通り過ぎる教授。
   やっとの思いで脱出する車。
   一度二度エンストして走り出す。
   歪んだバンパ-の後ろ姿遠ざかる。

   この世で一番馬鹿な者達     ・この世で一番好きな者達
   ・夢追い人とだまされ屋      ・夢追い人とだまされ屋
   ・人の行列が有ればいつでも    ・ぼろぼろの姿見れば誰でも
   ・先頭に立って死ぬ夢追い人    ・気違いと言われる夢追い人
   ・置き去りにされるだまされ屋   ・笑い物になるだまされ屋
   ・実は一番だいじな人だと     ・実は一番だいじな人だと
   ・気づく者もない         ・気づく者もない
   ・たとえ気づいたとして      ・たとえ気づいたとして
   ・君になれるか君にできるか    ・君になれるか君にできるか
   ・君にだって眠られぬ真夜中    ・君にだって眠られぬ真夜中
   ・彼らが訪ね来る時があるだろう  ・彼らが訪ね来る時があるだろう
  
  
   その上に広がる初夏の青い空。
                                 (O.L)
〇信州行き急行列車内   
   窓際の席で列車に揺られる青年。
   前にカメラを置き遠くを見ている。
   流れる緑の初夏の景色。
   なぜか思いだし笑いをする青年。
                                  (O・L)
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

カテゴリ
最新記事
プロフィール

sagapo5614

Author:sagapo5614
写真集「四季の肖像」の作者です。
プロフィルや作品はこちらのHPをご参照ください。http://mfnpf.jp/
下記リンク【四季の肖像】からどうぞ

リンク
月別アーカイブ
最新コメント
フリーエリア
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

検索フォーム
RSSリンクの表示
FC2カウンター
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。